なぜ左官屋が土間屋に!? ヒトモノカネ”情報”で動かす、土間業界のインフレ戦略!
![]() 代表取締役 川村篤 |
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金ゴテから最新機械まで操る川村工業の現社長。 見た目とはウラハラ?に、年齢の若い職人からも慕われるキャラクター! |
![]() 代表取締役 柴崎幸子 |
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グループ全体の会計業務、新規事業立ち上げを担う。 多数の建設会社の会計に携わってきた経験からくる視点が鋭く面白い! |
倉庫の建設が増えると踏み切った!先見の明。

前回は左官屋としての川村工業の歴史を少し振り返りましたが、今日聞きたいのはズバリ「なぜ土間屋さんにシフトしていったのか」。ここです!
このウラ話は気になっている人かなり多いと思いますよ。

左官屋は土間工事のビジネスチャンスを捨てていたようなものだったから。


土間屋さんってすごい大変な仕事なのに、なんでこんなに安くやるんだろう…って不思議で仕方がなかった。ほら、うちは左官屋だから土間屋さんに発注する立場だったからね。
リーマンショックの後だったというのもあって、目先のお金が欲しいから「安くてもいいです!」というスタンスだったんだ。
方や建築全体を見渡すと、これから物流倉庫がそこら中に建てられるだろうなと推測してた。

何か予兆を感じていたのですか!?

そういう現場が増えてきていて、
「これはもっと需要が増えるぞ!それにも関わらず物流倉庫で一番重要な「床」を造る土間は施工単価が安過ぎる…。発注主である左官屋のことを弱点まで一番良く知っている自分たちが下から突き上げれば、簡単に土間工事の相場を変えられるんじゃないか!?」
と直感でひらめいちゃったのさ。
左官屋の弱みは左官屋が一番良くわかる。誰もやりたがらない「土間」に見出したビジネスチャンス

左官屋の弱点というのは何のことですか?

だけど左官職人は土間はやりたくないわけよ、拘束時間が長いから。
夏は炎天下で暑い、冬は寒いわ露天だわ、生コンが乾かないから深夜まで帰れないなんて、そういう嫌な仕事は土間屋に押し付けようと。大きいと言われる左官屋の99%が下請け丸投げシステム。
左官屋だったら壁を塗って8:00〜17:00で終われるし、屋根があるところで作業することが多いから雨に濡れることもないからね。
誰もやりたがらない嫌な仕事をやっているのに、土間屋さんは相場がその頃平米200円台。相当熟練の職人さんが13,000円〜15,000円なんて人工で来ていてさ。いくらなんでもこれはマズイだろうと値段を上げようと話したことさえある。
うちらにとっては1回の打設で大きな利益になりやすい仕事だったけれど、その裏でいいように使われてしまっていたのが土間屋だったってことだね。
それを逆手に取って、その左官屋の弱点をよ〜く熟知しているからこそ、やり方次第でもっと儲けられる仕事だと確信していたんだ。万が一、土間屋がストライキでも起こしたら困った左官屋は値段を上げざるを得ない。その構図が見えていたから。
まぁ〜、うちが土間を始めるって言いだした途端、全員がぽかんと口を開けて「川村さんついに頭おかしくなったんじゃない?」って噂になってたけど。(笑)
でも社会の流れから言って倉庫は絶対的に増える。うちは200人規模で稼働してたからゼネコンとのパイプがすでに強いし、営業すればいくらでも案件は取ってこれるなと。
自分たちが反対側(土間屋側)に立てば、市場価格を引き上げてきっと正義の見方になれる!と踏んで、後日業界に大騒ぎを巻き起こしたインフレ戦略に乗り出したんだ。
市場をかき乱せ!!俺にルールはいらない!業界全体を大騒ぎにした新聞広告!

値段の叩き合いだった土間業界に、突如革命児が現れるわけですね!
インフレ戦略って、またどんなことをされたのですか…?ちょっと聞くのも怖いのですが。(笑)

「うちは土間で日当20,000円払います!」っていう新聞広告をあちこちに掲載して、当時の土間組合の会長が関東中の左官屋、土間屋にFAXを送りまくった。
あちこちから人を引き抜こうとしてるんじゃないかって業界全体が大騒ぎになってさ。(笑)
「そんなに給料もらえるなら川村工業に行く!」って職人の間でも噂になった。


ただ、急激に市場の相場を底上げするっていうのは皆の意識を180度変えていかないと無理だから。
引き抜かれちゃうんじゃないかって企業側を焦らせる目的もあって、左官・土間業界の意識革命。
要は、左官屋に対して「土間の値段を上げないと、人は集まらないぞ!」っていう強烈なインパクト、衝撃を与えたかったわけ。
その結果どうなるだろうと思ったけれど、落ち着いてきた今でも職人の日当20,000円という水準は維持されているよ。

そんな荒業をやってのけるなんて!稼ぎの天才ですね。

どこで働くかなんて、本人の自由じゃないですか。同じ仕事をするなら給料の良いところに行って当然。
それがどうしてこれほど大きな問題になるのかしらね。

いつも言っているけれど、今の世の中「ヒト・モノ・カネ」と同じように大事なのは「情報」。
情報っていうのは経済の情報。
あるべき姿というのは現場を俯瞰視すれば見えてくる。あれ、流れが何かおかしいぞって。
だから”全てアドリブ”というのも、本能で感じ取ってるんですよね。
短期間で川村工業の知名度を全国に広めたSNSマーケティング

川村工業、モノリスコーポレーションはInstagramやFacebookのファン数も桁違いですよね。建設業でこんなアカウント見たことないので相当有名なのだろうと思っていました。

Facebookは東北復興を機に始めたんだ。
(川村工業のFacebookには、1回で1,200件以上という驚異的ないいねが付く)
最初はよく意味がわからなかったんだけど、手軽に写真も載せられて文章が書けるっていいなと。
ブログは書けないけどこれだったらできそうだなと思って、復興行って頑張ってます!って、はじめは社内で見てる程度だったんだ。
それが次第に、自分たちのやってることが意外と人に見られてるんだってわかって、好き勝手に書いてたら噂が立つようになって。これは使えるなとSNS上で手当り次第バシバシ友達を増やしていった。(笑)
1日3時間、色んな人の投稿にいいねを押しまくってました。


川村工業、モノリスはさらに視聴率を伸ばすためにどんどん仕掛けていきますよ。
実際に会社のFacebookやホームページを通じて全国の同業社やお客さんからも問い合わせが来ている。
皆んながスマホを使うのが当たり前になっていて、自由に会社の個性を表現できるホームページやSNSは、いくらでも存在感を創り出せるよね。
仕事で強みを磨くのが大事なのは大前提だけれど、ネットでどれだけ発信しているかが将来の会社の評価になるんじゃないかと感じてます。
後継者不足でM&Aも流行っているし、多岐に渡る業種のなかでも特に建設業は活発です。
うちにも毎日のようにM&Aの会社から連絡が来るけれど、ネットで営業も採用もできている会社とそうでない会社では評価は違うでしょう。

川村工業のFacebookがコツコツ地道に視聴率を伸ばしていったように、Webで集客・採用するのは決して簡単なことではありませんし時間がかかる。Webで発信してきたことは「資産」ですからね。
人が嫌がる「土間工事」なら、楽しくしちゃえばいい!

建設業に携わったことのない若い人でも、興味を持ちやすい環境が整っていますよね。

自分たちは常に建設業の仕事を面白おかしく見せたいって思っていて色んなことをやってきた。
土間工事の機械導入に始まり、研修所、社員寮、全員統一したユニフォーム、ラッピングされた車もそうだし、コロナ禍ではITデバイスを大量に導入して全国の現場を繋いだミーティングができるようにしました。
うちは全国に出張に行く左官屋ですが、ビデオ会議が一気に普及したおかげでもうどこに居てもオンラインで全拠点繋がる。


ゼネコンやハウスメーカーの取り組みも欠かさずチェックしていますよ。
研修所を作ったのも例によって緻密な計画があったわけではなくて(笑)、ワールドオブコンクリートに視察に行った時に騎乗式トロウェルに乗ってる姿を見て、ゴーカートみたいで自社にも欲しくなっちゃったんだよね〜。
機械化で人手不足解消!とか歳を取っても働ける!とかそんなことはあんまり考えてなくて。(笑)


ただハーレーだと会社で所有するのも難しいからなかなか実現しないままそれが騎乗式トロウェルに置き変わりました!そこに今はスウェーデンからの研磨機&集塵機のDURATIQ(デュラティック)が加わって、益々最新のテクノロジーが充実してハーレーはどこか遠くに行ってしまいましたね。
(世界最高峰の研磨機 デュラティック)
左官も土間も自社施工。これからはトータル施工で品質向上、コストは削減。


左官職人も高齢化が著しい。
そういう色んな条件を踏まえると、結局お客さんのことを考えればトータル施工が理想的。
分離発注で無駄なお金が掛かっているのが今の建設業であって、本当は一人の指揮者がいた方がいいものができる。
現場の所長がその指揮者に当たるわけだけど、小さい現場なら旗を振ってまだ上手く行くし結果にも出てる。
でも大きい現場だと組織で管理していくしかない。
業者がぴったりくっついていればいいけど、縦割りに細分化してさらに安く安くと値段を追い求めて、その結果、管理があんまり上手く行っていない。
だから自分たちはそこで一括施工団を目指しているんだ。
金ゴテの伝統の左官工法から土間の機械仕上げ、サステナブル建築の全面研磨ポリッシュコンクリート、引き渡し直前の美装まで。
これからDURATIQの技術研修も本格的に始まっていくので、今後さらにSNSに注目が集まるでしょう。