職人が証明する未来--外国人労働者と機械が変える建設業
厚生労働省の中央最低賃金審議会は4日、2025年度の最低賃金の目安を全国の加重平均で1118円にすることで決着した。現在の1055円から63円の引き上げとなり、過去最大の増加幅となる。引き上げは23年連続となる。伸び率では6.0%だった。………政府は20年代に全国平均で1500円とする目標を掲げる。石破茂首相は4日、決着を受けて「目標に配慮いただきながら、データに基づく真摯な議論が行われた」と述べた。 -出展:日本経済新聞-




最低賃金2025爆上げ「裏の狙い」は





※OECDやILOが「最賃は平均賃金の50%以上を目標に」と提言している。
-出展:厚生労働省労働基準局-







賃上げの副作用--建設業の倒産と解雇
昨今の建設業を取り巻く経済環境は厳しく、資材やエネルギーの高騰、金利上昇による借入返済の負担増、そこに賃上げによる人件費の固定的な増加が、特に労働集約型の中小企業にとってはドミノ倒産の一押しになってしまう可能性は高い。
帝国データバンクの調査によると、2025年上半期の建設業の倒産動向は986件、資材価格の高騰と職人などの人手不足が影響したとある。下半期はさらに賃上げの一押しが確実に影響するだろう。資金繰りが厳しい中小零細規模の建設業の倒産件数は、通年で2000件を超えるのか。

―出展:帝国データバンク―
資金繰り悪化を短期的には乗り越えても、その先に価格転嫁力がある企業は生き残れるが、競争力の低い企業は淘汰されていくのだろう。賃上げだけが建設業倒産の原因ではないにしろ、複合的要因の一つであることは確かだ。




賃金爆上げは、副作用を狙っている?
関連のワイノットブログ「2025年東京都の最低賃金は1226円に、過去最大の上げ幅の狙いは?」こちらから?
職人に届く前に”溶ける”工事設計労務単価
最低賃金引き上げは表向き弱者救済、労働者の保護を謳っているが、こと建設現場において、労働者保護はどうなっているだろうか。民間工事のデータを拾うのは難しいため、以下「公共工事設計労務単価」のデータを引用する。※金額は加重平均値


※平成25年度(2013年)の労務費急増は、法定福利費相当額を反映する大幅な変更が行われたからである。

-出展:厚生労働省労働基準局-
労務単価と雇用に必要な経費の関係
前出の設計労務単価に関する資料(1~3)のうち、資料3にあるように、労務単価というのは労働者本人が受け取るべき賃金である。また、その労務単価に対して41%相当を事業主の必要経費とみるため、事業主が労働者1人の雇用に必要な経費は141%となる。
モノリスグループ(東京都)の場合、左官工なので資料1による加重平均単価は約30,000円だが、東京都財務局による公共工事設計労務単価(令和7年3月)によると左官工は33,000円である。さらに、資料3のように事業主が労働者(左官工)1人の雇用に必要な経費は約46,500円となる。
さて、現実はどうだろうか?左官職人に払われるはずの33,000円が → 25,000円~15,000円に減る、 だいたいこんなものだ。では、この溶けた8,000円~18,000円はどこに流れたのか。ここに建設業の歪みがある。その流れを作っている複合的要因のうち、建設業の闇となっているいくつかを上げる。
■重層下請け構造:労務費が末端に届くまでに、中間で経費と称して抜き取る予算のピンハネが横行している。但し、これは労働者自身が招いている安売りの結果でもある。
■現場を知る職人が単価交渉できない商流:建材や資材の商社・問屋が仕切っているため、現場の声が届かず、職人が単価交渉のテーブルにつけない。
■労務費を奪う機械化:コスト削減の新技術と謳い、省人化・効率化を売り文句にする機械化。しかし現実は省人化どころか、かえって職人数が増え、しわ寄せは労務費にいく。結局、労務費を機械がピンハネし、職人には何一つメリットがない。
建設業で生き残るための最強”裏技”対策
建設業の常識を打破!ブラックからの解放!労働基準法を味方に、コンクリート床工事などで、職人が残業しなくてよい打設計画を提言!
■夏場の作業:近年の日本の夏は、5月頃から10月ぐらいまで続く長い猛暑となり、建設現場もその影響を大きく受けている。コンクリートの乾きが早いため残業は減るが、熱中症リスクは格段に高まり、休憩時間の確保や交代制勤務といった安全対策が欠かせない。
炎天下では、機械の温度ですら限界を超える。ましてや人間の身体への負担は計り知れない。現場に即した安全配慮なくして、生産性や効率を語ることはできないのである。
■冬場の作業:コンクリートの乾きが遅くなるため、打設開始時間を考慮する。遅くとも午前11時までに打設完了させてしまえば、残業にはなりにくい。
■抜本的改革:「モノリシック工法」いわゆる一発直仕上げをやめ、均しで終える!そのあと職人は帰す!
「人」と「機械」その両方に向き合ってきた10年、モノリスコーポレーションが推奨する「メクレーンポリッシュ工法」はこちらから
そもそも屋外工事は、常に天候に左右される。長時間残業してコンクリートを均しても、雨打たれによって手直しが必要になることは少なくない。結局「無駄な労働・無駄な残業」となり、さらに元請けにとっても無駄な追加工事を増やすだけの悪循環を生んでいる。
さらに、日本の夏はすでに「人間が働くには危険な領域」に突入している。気象の変化という人間が抗えない現実の中で、猛暑下で労働を続けさせることは、もはや許されない。
だからこそ、仕事のやり方そのものを変えていく必要があるのだ。
サマータイム制の導入--午前5時~午後2時までの作業
建設現場で高まる熱中症リスクへの抜本的対策として、1つに作業時間の見直しがある。この方法には騒音問題など現場周辺の理解を必要とするが、実現している施工現場がある。
また、国交相は、7月~8月の現場作業を休工にする仕組みを試行する。
サマータイム制、夏期休工など、熱中症対策に加えて、建設業界の担い手確保にもつながるとみている。休工によって夏季に長期休暇を取れるのが当たり前の業界になれば、若手の入職に向けて他業界と差別化できると指摘している。
-出展:日経クロステック―
変形労働制の導入--猛暑の期間、1週の労働時間を20時間に減らす
近年、夏の猛暑が続く地域の場合、猛暑の時期の1週の所定労働時間を減らすというやり方もある。シフト作成のルールに則って、所定労働時間に凹凸をつけることができる。
厚生労働省がまとめた、建設業における1年単位の変形労働時間制の勤務カレンダーの一例が以下のようにある。

-出展:厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署-

関連のワイノットブログ「週休3日・1日5時間労働――建設業の持続可能な働き方、AIにも淘汰されない職人の未来予想図」はこちらから
建設業でリピートする外国人労働者たち
今年になってから、特定技能1号から特定技能2号へと進む外国人労働者が確実に増えている。さらに、賃上げが進むことで、外国人労働者にとって、日本は「稼げる国」としての期待値が一気に高まるだろう。その一方で、日本側はもはや「移民政策に舵を切らざるを得ない」状況に追い込まれており、労働市場の構造転換は明白である。
※特定技能2号(在留期間の更新に上限がなく、要件を満たせば家族の帯同や永住権取得も目指せる)
制度面を見ても、特定技能2号への参入障壁は明らかに低下しており、数字の推移がその事実を裏付けている。建前では「移民政策ではない」と言い張っても、現実には移民国家への入口に立っているのである。


日本語ペラペラ外国人50人、グローバルな左官屋の様子をご覧になりたい方はこちらをどうぞ。
以下は、建設技能人材機構が実施した建設業における特定技能評価試験結果である。


-出展:一般社団法人 建設技能人材機構-
外国人にとって「日本で働けばどれだけ稼げるか」という計算は、単純に本国と日本の手取り収入を比べればいい、という話ではない。実際には、日本で得た手取り収入から、生活費や来日コスト(渡航費・滞在経費など)を差し引いた残りが、本当の「稼ぎ」となる。
もちろん、どこに暮らしても生活費はかかる。しかし来日して働く場合、その生活費も含めて経費であり、手取りから経費を引いた「手残り」が本国収入の何倍になるか、が重要な指標だ。もしそれが本国の2~3倍になれば、日本で働く十分な魅力となり、「日本に行きたい」と思う理由になるだろう。
「稼げる」なら、多少過酷な仕事でも挑もうとするかもしれない。だが一方で考えてほしい。日本人自身はどうだろうか?今の賃金水準で、果たして建設業に就きたいと思うのか。慢性的な人手不足が続いていること自体が、その答えを示している。――それをいつまで「少子高齢化のせい」と片づけるつもりなのか。
建設業の職人が大絶賛!コスパ最強の機械
建設業界では、近年のインフレや物流コストの上昇により、建築資材の価格も高騰し、加えて商社や中間業者による便乗値上げが進み、建設業界全体が厳しいコスト圧力にさらされている。
現場で使用する工具や消耗品も例外ではなく、モノリスグループが推進する「コンクリート研磨」は、研磨機の刃物部分になる(ダイヤモンドパット等の)交換が必要で、その製品は海外からの輸入。中でも純正品は負担が大きい。



中国・福建省に本社のあるxingyi(シンイー)社は、もともと現場で汗を流してきた技術者が、もっとこんなモノがあればいいのに!との思いを形にしてきた会社だ。その強い思いが、130か国以上への販売実績に繋がる製品の開発・製造を可能にし、グローバルメーカーへと成長している。
特に、コンクリート研磨機器においては、世界でも高い評価を受けていて、アジア・中東・アフリカから、北米・南米と広範な地域で支持を獲得している。
XINGYIの製品は、単に「安価な中国製品」という枠ではもはや語れない。施工者視点で設計され、現場のニーズに即応する機動性を持ち、価格におけるコストパフォーマンスは欧米企業では成し得ないレベル。そのため、施工業者にとっては、まさに「垂涎もの」、喉から手が出るほど欲しいものになっている。130か国以上への販売実績という数字がその証明だ。
日本の商流のような情報の囲い込みもなく、直接、ECサイト「アリババ」でも買えるXINGYI製品だ。
また、消耗品に至っては、施工業者の「こんなモノが欲しかった」に、小ロットからでも応えてくれ、さらに、価格は欧州を経由して購入するモノに比べると、半値ほどに抑えられる。


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※まとめ※
最低賃金の爆上げは「生活底上げ」「国際比較でのメンツ」という表向きと、内需拡大や移民政策への布石という裏の狙いがある。
しかし建設業では、倒産・解雇・労務単価の“溶け落ち”によって職人には届かず、むしろ弱者切り捨てを加速させかねない。
だからこそ今、勤務時間の改革・新工法・現場視点の機械選びといった「生き残る裏技」を武器に、構造の歪みに抗う必要がある。従来の常識にしがみつく企業は淘汰されていくだろう。
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